<句集出版>「3.11そのものが季語」…岩手の高校教諭
2013年03月18日 12:30句集「龍宮」を手に取る照井葉子さん。震災から2年たっても被災地は「まだ渦中にある」と感じている=岩手県釜石市の県立釜石高校で、塩田彩撮影
・なぜみちのくなぜ三・一一なぜに君
岩手県立釜石高校の国語教諭、照井葉子さん(50)が被災地の悲しみを詠(よ)んだ俳句集「龍宮(りゅうぐう)」には、季語のない句が多い。荒廃した風景に「季節を感じられなかった」からだ。照井さんは、震災から2年を迎えて思う。「これからは3.11という言葉が季節を表す言葉となるのかもしれない」
照井さんは震災から約1カ月、避難所となっadidas
た同校体育館で生活した。発生3日後、がれきの山と化した町を歩いた。家族や自宅は無事だったが、目にした光景に「神様はいないのか」と感じた。
「俳句なんて詠んでいる場合じゃなかった」。だが避難所の運営を手伝いながら、時々ふと言葉が頭に浮かんだ。そのたびに、炊き出しのおにぎりの個数などをメモした手帳の端に書き付けた。
震災から約3カ月後、11句をはがきに記るし、全国にいる俳句仲間に送った。「泣きながら読んだ」「被災したあなたにしか詠めない」という感想が返ってきた。「句集を編もう」と決めた。
「照井翠(みどり)」という俳名で昨年11月末、角川書店から「龍宮」約600部を出版した。「犠牲者が龍アディダス
宮城のような場所で幸せに暮らしているように」との願いを題名に込めた。収められたのは223句。11年3月から12年6月ごろまで、実際に体験したり知人から聞いたりした話から詠んだ句だ。
・春の星こんなに人が死んだのか
震災当日の夜、避難所の外に出て上を見上げると、停電で真っ暗な闇の中で、見たことがないほど美しい星空が広がっていた。
・毛布被り孤島となりて泣きにけり
体育館では、親が迎えにこない生徒が、布団の中ですすり泣く声がかすかに聞こえた。
「龍宮」のもとになったのは、ホッチキス止めの句集だ。釜石市で3代続いた書店と自宅も流された桑畑真一さん(59)は、照井さんからそれを手渡され最初の4、5句を読むと涙があふれた。「それぞれの人の震災の記憶が呼び起こされる」と話す。
2年がたっても被災アディダス スニーカー
地の復興は遠く、まだ何も終わっていない。照井さんは2年の節目に、こんな句を詠んだ。
・三月を喪(うしな)ひつづく砂時計
【塩田彩】
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